070829 世界中が泣いても [随想]
部長と、映画の話をしていた。彼は、しみじみつぶやいた。
「年取って、涙もろくなったね。映画観て、ボロボロ泣くことが増えましたなあ。ストレス解消にはなるけどね」
僕は、映画を観て泣いた経験がない。話を合わせることが難しかったので、 「はあ、そうですねえ」 と、マヌケな相槌に終始してしまった。部長、ごめんなさい。
部長と、映画の話をしていた。彼は、しみじみつぶやいた。
「年取って、涙もろくなったね。映画観て、ボロボロ泣くことが増えましたなあ。ストレス解消にはなるけどね」
僕は、映画を観て泣いた経験がない。話を合わせることが難しかったので、 「はあ、そうですねえ」 と、マヌケな相槌に終始してしまった。部長、ごめんなさい。
幼少の記憶。母の本棚に、真っ赤な一角があった。そこには等しく赤い背表紙をもつ文庫本が数十冊と納められており、棚の2列ほどを赤く染めていた。
中学生のとき、担任が設けた 「朝の10分間読書」 という時間に僕が毎日読んでいたのが、この赤い文庫本であった。学校に持参する本を両親の本棚から物色するなか、赤い一角の一冊に手を伸ばしたのに特に理由はなかったと思う。