040311 日常 [日常]

 家に帰ると、まず炊飯器の電源を入れる。

 朝のうちに米を研いで水につけてあるから、コンセントを挿してボタンを押せばオッケー。すぐに加熱が始まり、30分もすれば炊き上がる。通常1合。気分によっては1.5合。

 待つ間に、スーツを脱いでシャワーを浴びて室内着に着替えて態勢を整える。パソコンも起動させておいてメールをチェックしてニュースサイトを閲覧して自分のサイトの掲示板を確認する。

 それも一段落したら魚を焼く。ホッケの醤油干しだったりアジの開きだったり赤魚の粕漬けだったり。冷蔵庫に入っているいずれかの魚を、コンロの魚焼きグリルの網の上にのせる。網の下に水を張るのを忘れないように。キッチンタイマーを「10分」にセットしておきながら、頃合いを見てひっくり返す。

 続いて納豆に加えるための小ネギを刻む。「納豆にはネギ入れるタイプ」だから。刻んだ小ネギは納豆を入れる器にあらかじめ入れておき、待機。

 余裕があって気が向けば味噌汁も準備するところなのだけれど、大抵はめんどくさいのでサボってしまう。乾燥ワカメも味噌も、なかなか減らない。

 ご飯が炊き上がって魚が焼き上がったら3パック98円の納豆を冷蔵庫から取り出して小ネギの上に盛って付属の醤油だれとカラシを入れてわしわしわしわしとかき混ぜる。納豆に薬味を入れる順番と、かき混ぜるタイミングについては諸説紛々あるようだけれども、僕は昔からこのやり方である。

 かくしてシンプルな食卓の準備が整い、座椅子に座った僕は箸を手にして骨をよけながら魚の身をつまみ、ご飯といっしょにかき込む。テレビは基本的にはつけないのだけれど、ごくまれにニュース番組なんかを垂れ流しておく。テレビを観るのは疲れるのだ。

 食べるのが早い方だし、たいした量でもないもんだから、ものの10分で食べ終わってしまい、箸を置く。食後時間が経つと動くのが億劫になるのは自明なので、そそくさと食器を片付けて洗ってしまう。温水の出ない台所の水道水は、冬場には果てしなく冷たく手の甲を打ち付ける。ステンレス製の炊飯器の釜に至るまですべてを洗い終わったところで、帰宅してから1時間。

 そうして僕の日常は回る。ぐるぐるぐるぐる。

 「日常に埋没するのはイヤだ」と言う人もいるけれども、埋没することができるからこその日常である。忌避すべきは、日常を平平凡凡なもの、退屈無味なものとしか思えなくなってしまうような心の有り様なのだと思う。ご飯の炊け具合の違い、魚の焼き加減の違い、食器を洗う水道水の温度の違いに、昨日と違う今日を感じることができたらそれでいい。

 水道水がだんだん温かくなってきて、また春がくる。

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