050507 自由席で考えたこと [日常]

 大学サークルとおぼしき集団の近くに乗り合わせたため、道中にぎやかだった。

 帰りの新幹線車中。岡山始発東京行きが日に何本か出ているので、これを狙えばゴールデン・ウィーク中の自由席という競争率の高い座席を至極あっさりと確保することができる。

 学生たちは通路を挟んで、そして前後座席を乗り越えて、ババ抜きやら大富豪やらに興じていた。けたたましい声が耳に響くも、とくに気にはならなかった。のみならず、自分の学生時代を省みて、同じようなことをしていた記憶を蘇らせ、彼らにそれを重ねるだけの余裕があった。

 驚かされたのが、東海道・山陽新幹線における 「のぞみ」 号の本数の増大であった。僕が上京した8年前、 「ひかり」 と 「のぞみ」 の比は7:3あるいは8:2だったと思う。それがいまではすっかり逆転している。 「ひかり」 の自由席にしか乗ったことがなかった僕は、今回初めて 「のぞみ」 の自由席に乗って、帰省した。 「のぞみ」 に自由席が設けられたというニュースを耳にしたのは、何年前だっただろう。

 年に2回ほどのペースで帰る実家周辺、および倉敷市街の風景は、変わり映えがしないようであり、しかし意識して仔細に観察すると、たしかな変化がそこにある。学校帰りに時々立ち寄った書店は焼き肉屋になり、カラオケボックスはマンガ喫茶になり、倉敷駅前から三越が消えた。横浜や大阪の三越閉店が大きく取り上げられていたなかで、売上高がワースト1だったと囁かれる倉敷三越は、全国的にはひっそりと、地元ではまあそれなりに惜しまれつつ、この5月5日に閉店したのであった。

 家のなかにも、変化はあった。炊飯器が代替わりし、扇風機が代替わりし、ビデオデッキはHDDレコーダーに変わっていた。その昔、ビデオの録画予約は僕の役目だった。実家を出てからは帰省するたびに、デッキの時間修整をおこなっていた。数ヵ月の間にどうしても1~2分ズレてくるのだけど、修整方法を僕以外の誰も知らなかったからだ。HDDレコーダーを使いこなしている母や妹の姿を見ながら、その便利さにただただ 「すげえなあ、いいなあ、欲しいなあ」 と嘆息しているのが現在である。

 岡山駅には、ついに自動改札が導入されていた。といっても新幹線改札限定で、在来線の改札は旧来どおりであった。新幹線乗り換え口に向かう通路の途中途中に、 「新幹線は自動改札です」 との仰々しい張り紙があったのが微笑ましい。我が家にはHDDレコーダーが、岡山駅には自動改札が。

 学生たちの半数が新横浜駅で降り、幾分静かになった。 「のぞみ」 のおかげで所要時間が30分ほど短縮され、随分楽になった。それでも薄手の文庫本なら3冊読める時間である。

 車窓から銀座や丸の内の夜景が見えてきて僕は、 「帰ってきたなあ」 と思う。

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