050804 ぼくのミステリな一人称 [随想]

 日記を書きはじめるときに、 《僕は 「僕」 でいいのか 「ぼく」 なのか、はたまた 「私」 なのか 「わたし」 なのか?》 という疑問が、頭をよぎる。

 一人称の問題。僕は 「僕」 という一人称を用いて、ほとんどの日記を書いてきた。その日の日記の雰囲気に合わせて 「ぼく」 を用いたこともあったけど、数は多くない。 「私」 や 「わたし」 を用いた記憶はない。

 僕と同世代、あるいは少し上の世代の男性が書いた文章を読むと、 「私」 を用いている人がちらほら見受けられる。 「私」 と名乗ると、それだけでクールで知的で大人な印象を与えることができてかっこいい。

 20代前半には、なんのためらいもなく 「僕」 と名乗れた。でも学生じゃなくなって、20代もラストスパートに入って、考えが変わってきた。 《30を前にして、いつまでも 「僕」 でいいのか?》 と思うし、 《いやいや、今年57歳になる糸井重里の 「ぼく」 は、ぜんぜん違和感ないじゃないか》 と思う。

 一人称は、個の特性と強力に結びつく。糸井重里の 「ぼく」 なら許せるように。そして、ある一人称が特定の人物を強引に手繰り寄せることもある。 「オイラ」 ならビートたけしだし、 「オラ」 なら孫悟空だし、 「ワイ」 ならプロゴルファー猿だ。

 仕事で、取材相手や取引先と話すときは 「私」 を用いている。いつまで経っても慣れないし、 《 「私」 を使っている僕》 を確認するたびにむずがゆくなるけれども、仕事なんだからしょうがない。仕事のうえで、あえて 「僕」 という一人称を使うときは、 《僕とあなたとは、だいぶ親しくなってきましたよね? ね?》 ということをほのめかしたいときであったりする。親密度のものさしとしての、 「僕」 。

 男性の一人称には、ほかにも 「俺」 「オレ」 とか 「儂」 「ワシ」 とかがあって、選択の幅が広い(書き言葉で使うかどうかはともかくとして)。対して女性は、 「私」 「わたし」 を使っておけば九分九厘まちがいないのであって、こういう類の悩みは少ないのかもしれない。意図して 「アタシ」 「ボク」 「オイラ」 を用いるケースもあるけれども。うん、 「ボク」 を使うショートカットの女子高生は、とてもよいと思います(また古典的な)。

 いや待て、女性の場合は、 《自分の名前を一人称にしちゃう》 という離れ業があるのであった。 「まつうらはぁ~」 とか 「あゆの新曲はねぇ~」 とか。これは男性はマネできない。一人称の世界は奥が深い。

 で、結局今日もまた 「僕」 を使っちゃうんだよなあと、らなは思うの。

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