060821 シンメトリック・ゲーム [野球]

 野球には 「美しいスコア」 というものが存在します。簡単なところでは 「7-3」 よりも 「4-3」 のほうが美しいし、 「2-0」 よりも 「1-0」 のほうが美しい。半端な点差よりもいっそ1点差のスコアのほうが、 「美しいぞ」 と感じます。1点の軽重や得点の入る頻度はスポーツの種類によって異なり、たとえばサッカーでは 「1-0」 というスコアはザラでしょうから、同じ 「1-0」 でも希少価値は野球のほうが上であるように思われます。

 さらに野球は、攻守が1回から9回までのイニングで区切られているため、上図のように勝敗をスコアボードによって示す場合もあります。2006年5月27日にスカイマークスタジアムで開催されたバファローズ-ベイスターズ戦では、我らが清原和博選手が逆転サヨナラ満塁ホームランを放ってバファローズに勝利をもたらしましたが、この 「7x-6」 というスコアが美しいのはもとより、 「9回裏に満塁ホームランによって4点を奪い、3点差をひっくり返し、1点差で決着」 というスコアボードもまた、最高に美しい *1 。この感覚、僕のひとりよがりなものではなく、少なくともその一部は共感していただけるのではないかと思います。お願い、共感して。

 まさに昨日、美しいスコアボードがまたひとつ誕生しました。第88回全国高校野球選手権の決勝、早稲田実-駒大苫小牧戦であります。 「球史に残る」 「引き分け再試合」 「怪物・田中投手」 「ハンドタオルの佑ちゃん」 などと、スポーツニュースのみならず一般のニュースでも大きく取り上げられていたため、野球に関心のない方々の目にも留まったのではないでしょうか。このスコアボードの美しさといったらもう。

 試合終盤に1点ずつ取り合って延長戦に突入、15回まで死力を尽くし合っての 「1-1」 というスコアも試合経過ももちろん美しいのですが、注目すべきは (僕が勝手に注目しているんですが) 、 「 (他でもない) 8回表・裏に、 (他でもない) 1点ずつ取り合っている」 という部分であります。つまり、

 点Oを対称の中心として点対称に、そして
 AもしくはBを対称軸として線対称になっているわけです。

 なんて美しいスコアボードでしょう (ひとりで大興奮) 。さらにはこのスコアボードが、 「王貞治も荒木大輔も達成できなかった夏の全国制覇に挑んだ早実」 と 「73年ぶりの夏・三連覇に挑んだ駒苫」 とが対戦した決勝戦で得られたということ。付帯するドラマも、これ以上望みようがないくらいにできすぎています。

 と、ここまでですでにスコアボードフェチとしてはお腹一杯なのですが、さらに今日ですよ。再試合の結果。

 最後に到って、1点差のスコアを示してくれた両校の選手たちに惜しみない拍手を。年齢、ひと回りくらい違うけど惚れた。

*1 3点ビハインドからの逆転サヨナラ満塁ホームランのことを、 「つり銭なし」 と表現することもあります。プロ野球史上、逆転サヨナラ満塁ホームランはこれまでに全27本、そのうち清原和博選手のものを含め13本が 「つり銭なし」 逆転サヨナラ満塁ホームランです。

参考資料
スポーツニッポン (2006年5月28日付紙面)
日刊スポーツ (2006年8月21日付紙面)

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