060907 セカチューげんきでちゅう! ふたたび [随想]

 「整いすぎていないか?」

 書籍のタイトルや記事の見出しを決めるときに、注意することのひとつです。 「整った」 タイトルや見出しとはなんぞや? というのは説明しづらいのですが、あえて言い換えれば 「正しすぎてひっかかりがない (=印象に残らない) 」 ということになるでしょうか。

 僕の、世界の中心は、君だ。

 唐突に告白。や、これは8月26日に封切られた韓国映画の邦題です。ご存知 「セカチュー」 こと 『世界の中心で、愛をさけぶ』 のリメイク。このタイトルを一見して、どのような印象をもつでしょうか。

 読点が多いな。

 映画館の予告編ではじめて見たとき、僕はこう思いました。短いセンテンスに、2回も出てきます。ためしに 「僕の、世界の中心は、君だ。 読点」 で検索してみると、 「何このタイトル!?」 「読点つければいいってもんじゃない」 「マヌケだ」 とまあさんざんな言われようで、同じように感じた人は多かった模様です。

 僕の世界の中心は、君だ。

 じゃあ正しく整っていればよかったのか? というと、映画のタイトルとしてこれではあまりにも平凡に思われます。映画評論家の水野晴郎が 「わざと間違えて」 つけたタイトル、 『007/危機一発』 の例を引くまでもなく、正しすぎないことが成功に結びつく場合は多いのです。 『僕の、世界の中心は、君だ。』 においても、 「、」 が余分に入り形が崩されたことにより、人はそこにひっかかる。不評も買う格好とはなりましたが、それだけ口の端にのぼった時点で、タイトルとしては成功でしょう。

 前回の 「ハンドタオル」 の例と同じく、流行語にしてもタイトルにしても 「正しさよりも印象」 が優先されるし強いという側面があります。そこんところ、性分として正しさばかりにこだわってしまいがちな僕が、タイトルや見出しを考えるうえで苦手な部分なのです。だから毎回、仮題をつけてみたあとに自問します。 「整いすぎていないか?」

 余談。過去の日記で 『世界の中心で、愛をさけぶ』 について 「ひらがな→○」 「漢字→●」 の置換を適用して 「●●○●●○、●○○○○」 とし、 「 『愛を叫ぶ』 だったら、 『●●○●●○、●○●○』 となってリズムがよかったのに」 などとひとり文句をつけていた僕ですが、 『僕の、世界の中心は、君だ。』 についても同様の適用をおこなって

 ●○、●●○●●○、●○。

 となることを確認し、 「キレイだ」 と悦に入っています。文章を崩したことにより、新たな均整が生まれました。いいタイトルだ (映画、観てないけど) 。

参考資料
岩永嘉弘 『一行力』 草思社

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