061129 読まない雑誌 [随想]

 「どんな雑誌、読んでます?」 と訊かれ、考えてみた。 『 Pen 』 『広告批評』 『編集会議』 『 Sports Graphic Number 』 『婦人公論』 『デザインの現場』 『芸術新潮』 ……。すべてを毎号買っているわけではないし図書館で流し読みするだけですませてしまうことも多いけど、だいたいこんなところが思い浮かぶ。とりとめがないような、あるような。

 「すべてを毎号買っているわけではない」 のは、財政的事情とともに 「巻頭特集にあまり関心がない号は、買わない」 という理由も大きい。たとえば 『 Number 』 ならば、野球特集号は買うけど、サッカー特集号は買わない、というように。

 購読誌は、購読者の興味の方向をそのまんま反映する。 「 『 Number 』 の野球特集号を買う人」 は、十中八九の確率で野球が好きであろう。あるいは購読誌は、その時々の心理状態の赤裸々な投影でもある。今年僕は 『編集会議』 を2回買っているけど、その巻頭特集は 「フリーライターで生きる道」 (2006年8月号) と 「 『言葉力』 の鍛え方」 (同10月号) であった。この人、仕事で何か悩みがあるみたいです。

 このように、購読誌を開陳することは自分自身の趣味嗜好、さらには心理状態までもさらけ出すようなもんで、多少の気恥ずかしさがともなう行為だ。で、先に挙げた僕の購読誌各々をあらためて眺めてみて思うのは、 「いかにも僕」 だけども 「意外性がない」 。

 もうちょっとこう、 「えっ!? こんな雑誌読んでるんですか?」 という雑誌があってもいいのではないか。冒頭の質問を僕に投げた人物は女性だったのだけど、彼女は 『週刊文春』 を購読誌のひとつとして挙げて、僕を驚かせた。 『週刊文春』 といえば昔よく家に転がっていて (父が買っていた) 、和田誠の表紙と椎名誠の連載でおなじみの雑誌ではないか。そのせいか 「オヤジが読む雑誌」 という認識が僕のなかでは形成されていて、 「よく読んでますよ」 と彼女が話すのを聞いて、思ってしまった。 「そいつはクール」

 僕にもこういう雑誌がほしい。高校生のころ 『 BURRN!』 という雑誌 (ハードロック・ヘビメタ専門の音楽雑誌) を愛読していて、これは僕の人生においても異色の購読誌だったのだけれど、こういうやつ。 「へええ、そういうご趣味もおもちなんですね」 って言われてみたいじゃないか。誰に。

 そんなわけで、ここ最近の僕は雑誌の新規開拓に励んでいる。読んだことがない雑誌、興味の対象ではない雑誌を、あえて買ってみている。たとえば経済誌とか。また、新規開拓のみならず従来の購読誌についても、購入スタイルを意識的に変えてきている。 『 Number 』 だったら、サッカー特集号を積極的に買い、読むようにしている。結果、 「やっぱり興味はもてない雑誌・特集」 も少なくはないのだけど、 「まったく読みどころがない雑誌・特集」 というのは、ない。知らない分野の情報に触れるのは悪くない。興味・関心がある分野にはほっといても強くなるのであって、むしろ興味・関心がない分野、すなわち 「読まない雑誌」 のなかにこそ、自分の幅を広げる鍵とか企画の種とかがあるのではなかろうか。そう結論づけてみる。われながら強引だ。

 そういう僕は、今日 『日経ビジネス Associe 』 の最新号 (2006年12月5日号) を買って家路についた。巻頭特集は、 「デキる人の 『書く技術』 」 。やっぱりどこかで行き詰まっているのではないか、この男は。

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