061215 シン首相 [日常]

 本題に入る前に、予備知識を。現在、インドのマンモハン・シン首相が来日中で、今日15日に、安倍晋三首相との会談が予定されています。急成長を続けるアジアの大国との今後の経済協力のあり方を占う意味で、重要な会談といえるでしょう。

 おさらいします。インドの首相は、マンモハン・シンです。

 それを踏まえて。

 一昨日13日夜、会社からの帰路のことでした。最寄りの地下鉄駅から地上に出ると、赤い誘導灯を手にした警察官が、道のそこかしこに立っています。 「交通取り締まりの強化かな?」 と、とくに気にもせず横断歩道を渡ろうとすると、 「すみません、ちょっと止まってくださーい」 。警察官のひとりに呼び止められました。

 すわ、人生初の職務質問か? と、ちょっとワクワクしたのですが、そうではありませんでした。警察官 (以下、P) は、僕 (以下、R) にこう言いました。

 P:まもなくこの道をインドの首相が通りますので、交通規制しています。すみませんが少々お待ちください。

 なるほど、そういうことでしたか。そういえばこの交差点の信号は、すべて赤のまま変わる気配がありません。信号までも規制されているのでしょう。さすがVIPだ。大通りとはいえ夜になると交通量が極端に少なくなる道ですが、いつもに増してひっそりとしています。通行人も見渡す限り、僕のほかには誰もいません。警察官に囲まれる僕。今後あんまり遭遇したくはないシチュエーションですが、この日は新鮮に感じられました。

 トランシーバーで情報を授受する警察官を横目に、待つこと5分。予定に遅れが生じているのか、目当ての車はなかなか来ません。

 P:ごめんなさいね、お待たせして。

 R:あ、いえいえ。

 間がもたなくなったのか、警察官から話し掛けてきてくれました。外見に似合わず、親しみやすい人柄のようです。好感をもったので、僕からも話を振ってみました。

 R:寒いなか、お疲れさまです。

 P:いえいえ。ありがとうございます。

 「いえいえ」 と恐縮し合う、よくわからない関係が構築されてしまいました。これではいかん。何かフレンドリーになれる話題を! 窮した僕は、思いあまって次のように発言しました。

 R:インドの首相って、 「タクシン首相」 ですよね?

 P:そうですそうです、 「シン首相」 です。

 違います。

 不思議にかみ合ってしまいましたが、違います。 「タクシン首相」 は、今年9月のクーデターで失脚したタイの前首相です。どうやら僕の滑舌の悪さと北風の音とが相まって 「タク」 がかき消え、警察官の耳には 「シン首相」 の部分しか届かなかった模様。帰宅後に調べて、自分の無知さに赤面した次第ですが、会話が成立してしまったその瞬間は、 「よかった、合ってた。僕の世情認識も捨てたもんじゃないね」 と安堵してしまいました。大間違いです。

 インドの国旗を掲げた黒塗りの車が目の前を通過していったのは、そんな場つなぎの会話のさらに数分後でした。とくに挨拶することもなく僕は歩き出し、警察官は職務に戻りました。

 「インドの首相は、 『タクシン』 じゃなくて 『マンモハン・シン』 」

 この夜に学習しました。二度と忘れません。

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