070112 第一印象を収集する [随想]

 転職して2ヵ月が経った。新しい職場に飛び込むということは、多くの 「初対面」 が生まれるということである。それまで片手で足りる社員数の会社で働いていた僕にしてみれば、同一フロア、同じ部署で数十名が共に働いている現況はまったくもって異世界であり、入社当初は気の休まる間がなかった。続けざまの 「はじめまして」 は、神経にこたえる。

 見方を変えれば、僕という人物を迎える側の人々、つまり僕以外の社員全員にとっては、たった1回こっきりの 「はじめまして」 である。どれだけ気張って 「よろしくお願いします!」 と言ったところで、応じる個々の社員にしてみれば中途採用者の通過儀礼のひとつに過ぎない。 「ああ、そう。よろしく」 と、至極クールに返されてしまう。

 だけど、短期間にこれだけの 「はじめまして」 が積み重なる機会は、人生においてそうそうあるもんじゃない。僕はめげずに、新入社員ならではの初々しさをよそおって (よそおって?) 、コミュニケーションの構築に努めた。そこで心がけたのが、 「第一印象を収集する」 ことであった。

 僕は、人にどのような第一印象を与えているのか? 第一印象というものは、関係が長じるにつれ次第に忘れ去られていくものである一方、心の奥底には根強く残り、くつがえすことがなかなか難しいものでもある。 「第一印象いいもん同士」 という言葉もあるように (古いな) 、恋愛の萌芽となる可能性だってなくはない。ロマンスが芽生えたらどうしよう。

 で、ロマンスは芽生えなかったけど、一通りの顔合わせが終わり歓迎会も経て、その時々の会話のなかからキーとなる言葉を拾い出し、記憶にとどめ、サンプリングをおこなっていった (母集団30くらい) 。 「どう見えます?」 なんて直球の質問を投げるまでもなく 「Ranaくんって○○っぽいよね」 という流れに会話が進んでいくのは、双方が手探り状態にあるなかでの無難な話題だからなんだろう。

 そして得られたのが、以下のふたつ。

 「几帳面そう」
 「落ち着いてる」

 集計するまでもなかった。僕の第一印象は、このふたつに集約されるらしい。どちらも昔からくり返し言われてきたことなので、 「あ、やっぱり」 てなもんだ。わずかな所作・発言のみから 「几帳面そう」 なんて評価されるということは、よっぽどなんだろうか。几帳面さは編集の仕事をするうえでは悪くない資質なので、肯定的に受け止めておきたい。

 かたや 「落ち着いてる」 という評価に対してはちょっとした感慨もあって、それは小学生時代を通じ、通知表の所見欄に 「もう少し覇気があればいいですね。」 と書かれ続けてきたことに起因する。当時、子供らしからぬ覇気のなさだったことは自認するけれども、 「覇気がない子供がいたっていいじゃないか」 という反発もおぼえたものだ。大人になって、ようやく年相応の落ち着きとみなされるようになったということか。 (もちろん、いい大人に対して初対面で 「覇気がない」 なんて告げる大人もいないわけで、 「落ち着いてる」 とは、その巧妙な言い換えに過ぎないととらえることもできる。)

 と、 「第一印象を収集する」 なんて仰々しいテーマを設定したはいいものの、人はそんなに変わらないもんだということを再確認させられる結果となってしまった。この人間関係がどのくらい続き、第一印象がどのように上書きされていくのかはわからないけれど、ところどころでイメージを裏切る行動にも走ってみようかなと、ここに誓うのであった。

 そうそう、少数意見のひとつに、こんなのがあった。

 「Ranaくんて、合コンで浮いてそうだよね」

 ほっといてください。

comments

はじめまして。
…なんて。(「のた」ですよ~。)

自分の中の好きじゃない部分を何とか変えようと思うのですが、人間ってなかなか変わらないもんですね。
変えられないし、他人を変えることもまた難しい。
私もそれなりの転機を重ねて、数々の「はじめまして」を乗り越えて?来ました。
これからまた引越しするので「はじめまして」をしなくてはなりません。

でもやっぱり新地でも自分は自分。
あまり好きじゃない部分を持ち続ける自分なんでしょうねぇ。

semi166さん>
はじめまして!(乗ってみる)
変わらんもんですねえ。今回、それを思い知りました。
引っ越しもまた、大きな転機で。「はじめまして」も多いでしょう。
う、でも僕は上下左右の住人とほとんど顔を合わせたことがないな……。

  • by Rana
  • at 070117 00:11
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