071011 極私的クライマックスシリーズ [野球]

 昔から団体行動が苦手で、遠足でも修学旅行でも、班行動が解かれたとたんにスススーっと集団から離れ、ひとりプラプラ歩いたりポケーっとしたりしていた。時には班行動中に姿をくらますこともあった。班長、すまんかった。

 そんな僕も長ずるにつれて徐々に処し方を身につけ、 「団体行動中のやるせなさを、やり過ごす」 術を体得した。少なくとも仕事を中心とした社会的な営みを円滑に進めるべく、表面を取り繕えるようにはなったと思う。先生、僕も大人になれました。

 とはいえ人間、根っこのところはそう簡単に変わるものではない。できることなら団体行動はご遠慮したい。飲み会は4人までがいい。願わくばサシ。大人数のなかに身を置いたときの不安定感は、いまなお苦手だ。

 でも、野球は、別。

 観戦をもっぱらとしてきた野球だが、観れば観るほど 「自分でもプレイしたい」 という欲求が高まっていく。小学生のころは日曜日ごとに空き地で2対2の 「野球のようなもの」 をしていた。大学生のころは研究室対抗のソフトボール大会に参加した。社会人になってからは、たまにキャッチボールをする機会がある。

 野球の近縁にあるこれらの活動は、どれも集団におけるコミュニケーションを要するという点で苦手な領域に属するもののはずだが、積極的にのめり込んでいった。好きが苦手を凌駕した。そして、野球近縁の活動をすればするほど 「真の野球をしたいぞ」 という思いに駆られるのであった。

 だが、野球チームを結成するためには最低9人必要だし、試合を行うには18人が必要だ。ふだん 「団体行動? ふんだっ」 というスタンスでいる僕にとって、これらは気が遠くなる人数である。僕にできるのは、プロ野球やアマチュア野球を観戦することだけなのだなあ、と世をはかなんでいた。

 そこに耳寄りな情報。職場の有志が集う野球チームが、トーナメント戦に参加するらしい。

 聞くところによると、例年人数がギリギリで、大会参加があやぶまれる零細野球チームであるという。入社早々 「Ranaくんは野球するの?」 と問われ、即座に 「するっス。大好きっス」 と答えてしまった。大ウソだ。定義どおりの野球は、したことないぞ。

 素人もいいとこの僕であったが、数回練習に参加してみて、安堵した。いずれのメンバーも、巧拙の差は幾分あれど言ってみればみんな下手の横好き。年に数度の練習で初戦突破をめざす弱小チームなのであった。僕がいちばん下手なのは厳然たる事実なんだけど。20年以上野球を観つづけているのに! 「観る」 と 「する」 では、こんなに違うか。

 それでも下手なりにマメに練習に参加し、いくらか上達の手ごたえを得ることができた。どれだけ筋肉痛に苦しめられても、野球ができる喜びに勝るものはない。いざ試合に臨む。なんと僕はスタメン (注1) で、守備位置はライト (注2) で、打順は6番 (注3) だ。

 注1:人数がギリギリだから。
 注2:草野球ではもっとも球が飛んでこないポジション。
 注3:左利きの僕を6番に配置すると、ジグザグ打線が完成するため。

 

 当日の朝、38度超の高熱が。

 泣く泣く、キャプテンに不参加のメールを送った。遠足を楽しみにしすぎた小学生か、僕は。ガラにもなく団体行動しようとしたら、このザマだ。 (なんとか10人集まって、試合はできたらしい。そして初戦敗退したので、次の試合はまた来年)

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