071130 30代の色 [随想]

 30代は自虐的になりやすい、とは30歳になった直後の日記にも書いたんだけど、実際 「30になっちゃいました」 と口にしたことは何度もあって、そのたびに 「なんで恐縮しなきゃならんのだ?」 と思うのである。

 30歳という年齢こそ、遠い昔、自分が憧れていた年齢だったはずなのだ。具体的には小学校高学年くらいから、僕は 「早く30歳になりたい」 と思っていた。不器用で、周囲との折り合いが悪かった時代の (今でも十分不器用だけど) 逃避願望であった。青少年時代をすっ飛ばしたかったのだ。

 そんな憧れだった年齢になってみて、居心地のよさを感じることは、たしかにある。性格・容姿その他もろもろ、そりゃあ直すべきところ、直したいところはたくさんあるけれども、 「じたばたしたって始まらないし」 と開き直ることができるようになって余裕も生まれた、というのが一因だろう。

 一方、年齢ならではの悩みも近頃ちらほらと浮上してきていて、そのひとつが身の回りの品々、平たく言えば 「ファッション」 「ガジェット (小物) 」 に関することである。30代にふさわしい身だしなみとは何ぞや? と。TPOをあんまりわきまえないで生きてきた僕も、こんなことを考えるようになってしまった。

 象徴する機会が、つい先日訪れた。来年の手帖の選択だ。ここ数年、僕が公私にわたって使用してきた手帖のカバーは、イエローとかオレンジとかピンクとか、えらくビビッドなカラーのものが続いていた。もちろん気に入っての購入だし、プライベートで使うぶんには問題なかったのだが、仕事の現場でスケジュール確認のために取り出さざるをえない状況に置かれたとき、ちょっぴり躊躇するようになってきたのだ。 「ピンクかよ」

 30代男子がピンクとは、やはりキツイのではなかろうか。

 夏の終わり、2008年の手帖が店頭に並び始めてから、折に触れ、こう考えてきた。嗜好としてはビビッドカラーにおおいに魅かれ、手帖を物色する際、ついつい手に取ってしまうのもやっぱりイエロー、オレンジ、ピンクほか、目がちかちかするような色ばかりなんだけど。

 で、結局、購入したのは米倉涼子もびっくりの黒皮の手帖。日和った。

 皮の匂い立ちのぼる真新しい手帖を手にして、しみじみ思う。これが大人の階段ってやつなんだな、と。その他ビビッドカラーなガジェットのあれやこれやも、そろそろ考えなきゃならんのか。

 

 ……つべこべ言いながらも、20代前半の同僚 (女性) から 「えっ? 30歳なんですか? うっそー。もっと若いと思ってましたー。きゃはっ」 と言われると、とってもうれしいのである。そういうものなのである。

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