080206 第二印象は漂流する [随想]

 1年あまり前、 「第一印象を収集する」 という日記を書いた。自分が人に与える第一印象を、転職まもない時期に同僚から意識的に聴取していくこの試みは、 「几帳面そう」 「落ち着いてる」 という、十二分に自覚している性質を再確認するだけの結果に終わった。

 当時の日記では触れなかったものの、歓迎会の席で浴びせられた次の言葉がある。

 「Ranaさんって、オタク?」

 ええと。

 返答に詰まっているうちにうやむやになり、話はヨソへ移ってしまった。はたして僕はどう答えればよかったのだろう。そりゃあインかアウトかで言えば趣味は思いっきりインに偏っているものの、 「オタクです」 と胸を張って言えるほどの特定の対象もそれに関する知識も、僕は持ち合わせていない。といって 「否」 と断言できるものでもないような。まあそれはいい。語義が曖昧ゆえ、もとより即答できる問いではない。問題は別にある。

 ほぼ初対面で、 「オタク?」 と疑問を抱かれるような風貌を、僕は備えているようだぞ。

 うすうす感づいてはいたけれども、ズバリ言及されると衝撃であった。 「オタクっぽさ」 の要素とは何だろう? 自分はそのうちの何を、どれくらい、備えているのだろう? しばし考え込んだのち、とりあえず僕はこの出来事を記憶の奥底に沈めることにした。月日を経て付き合いを重ねるにつれ、こんな不本意な第一印象は薄れ消えゆくだろうさ。 「オタクっぽく見えたけど、それほどでもないんだね」 という認識が広がるだろうさ。そう思っていた。

 しかし、つい先日、別の同僚から投げられた言葉がこれだ。

 「サブカルといえば、Ranaさんですよね」

 1年経っても変わってない。(※)

 おかしいな、サブカル嗜好を公言したことなんてないし、むしろサブカル方面には疎いほうだと思うのに。サブカルの代名詞ってどういうことさ。1年前に封印した記憶が甦ってしまったじゃないかどうしてくれる。

 初対面でも、長い付き合いを経ても、 「オタク」 「サブカル」 扱い。架せられた業のようなものを感じた次第である。

 

※ 「オタク文化」 = 「サブカル」 とくくる見方がある一方、両者を差異あるものと見なす向きもありますが ( 『ユリイカ』 2005年8月臨時増刊号) 、ひとまずそれは置いておきます。

関連日記
070112 第一印象を収集する

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