■ それは4年半前の話。
1999年3月29日 その日の夜、僕のPHS(当時はアステルユーザー)に、留守録が入っていました。 再生してみます。ピッ。 ?:あ、もしもーし。Ranaさんでしょうか? わたくし、日本テレビの●●と申しまーす。ちょっとご相談したいことがありますので、また電話しまーす。 ? 日本テレビ? それって日テレ? 歌手デビュー? ジャイアンツのスカウト? 一体何ごと? いくつものクエスチョンが頭の中に渦巻きました。すぐにでも折り返し電話をかけてみて確認をしたいところでしたが、もう深夜と言ってもいい時間。いかな相手がテレビ局を名乗ってるとはいえ、電話は非常識かと思われました。疑問は明日に持ち越しです。 |
1999年3月30日 あくる日。大学は春休み中ではありましたが、新学期の準備だかなんだかで、構内は多くの学生で溢れていました。僕はサークルのラウンジで、のんびりとお昼前のけだるい時間を過ごしていました。 Tururururururu...(着メロなんてない時代でした)。と、そこに電話が。 もしやと思って即座に出てみます。 R:もしもし……。 ?:あっ、Ranaさんですか? 昨日お電話しました、日本テレビの●●という者ですけれども。 R:あ、どうも……(警戒)。 N:あのですね、ちょっとお願いがありまして。わたし、『ルックルックこんにちは』の制作をしている者なんですが、現在「○○大学周辺の、学生が選ぶ美味い店ベスト10」の取材をしているところなんですね。 R:ほうほう(なんだそりゃ?)。 N:で、Ranaさんはご存知かとは思いますが、エスニックカリーのお店でありますメーヤウさんが、栄えある第1位に選ばれましてですね。 R:はいはいはいはい!(俄然元気) N:そこで、貴大学のサークル情報誌を拝読しましたところ、Ranaさんが、そのメーヤウの愛好会の会長をされているということを知り、お電話差し上げたのですが。 会長:うむ、いかにも会長である(突如えらそう)。 N:なるほど。そこでお願いしたいのですが、1位紹介の際に、ぜひともRanaさんをはじめとする愛好会会員様に、メーヤウさんを熱く語っていただきたいと思っておりましてですね。 会長:ぐふぅっ(驚愕)。 N:いかがですか? ご協力お願いできませんでしょうか? 会長:え、え、え、えーっと、それ、いつですか? N:今日です。 会長:がふぅっ(心の準備が)。 N:お願いしますよぅー(テレビ局っぽい軽薄さで)。 会長:よかろう、受けて進ぜよう(会長らしく威厳をもって)。 N:おおっ、ありがとうございます! それでは、13時に講堂前で収録しますから! 会員のみなさんも連れてきてくださいね! お待ちしてまーす!(プチッ) 会長、公共の電波に登場決定。 これは面白いことになりました。確かに僕は大学のサークル情報誌に「メーヤウ愛好会」の名前と活動内容、連絡先電話番号を掲載してもらいましたが、まさかこんな展開になろうとは。 早速、各地に散らばっている会員を招集しました。 Tururururururu... もろやん:もしもし。 会長:あ、もろやん? 会長だけど。 もろやん:ああ、何? メーヤウ行くの? 会長:いや、ちょっと違う。メーヤウ愛好会、全国進出するから。13時、講堂前に来てね。 もろやん:え? 何? 何のこと? 何で? 会長:じゃ、待ってるから。 もろやん:え? え? え? プチッ。 1名確保。 そんなこんなで、会長の電話攻撃による強権発動で、会員を4名確保しました。総勢5名で電波ジャックする青写真です。みんなヒマ人です。 そして。 13時、講堂前。 仁王立ちする精鋭5名。 そこに、数名の日テレ撮影スタッフ登場。 N:こんにちはー、よろしくお願いしまーす。あ、みなさんが愛好会なんですね? 会長:左様。 N:えーっと、じゃあ、メーヤウさんのオススメコメントを言っていただきたいんですが、みなさんは、ボーリングのピンのように、隊列を組んでもらいましょうか。会長さん真ん中でね。 会長:えええ?(それ、さらし者) N:(問答無用で)で、そうだなあ、「我々メーヤウ研究会は!」なんて言ってはじめてもらいましょうか。 会長:いや、「研究会」じゃなくて「愛好会」なんすけど。 N:あ、そかそか。んー、でも、「研究会」の方がよくない? 「お前ら、何研究してんだよ」ってな感じで。 会長:う、う、う、そうかも……(押し切られそう)。 N:うん、「研究会」でいこうよ! 「研究会」で! いいでしょ? 会長:うーむ、うーむ、しかし我々は愛好会であって……。んーと。 N:じゃ、リハーサルいきましょう。 会長:はうあっ。 会長、勢いに気圧される。 我々「愛好会」は、自らのことを「研究会」と称せざるをえなくなりました。テレビ局おそるべし。当時は抗う術を持ち合わせていませんでしたが、今となって思い返すに、実に屈辱的です。これは悔しい。悔しいですがまあ、ぶつくさ言ってもはじまりません。不承不承隊列を組み、カメラリハーサルをします。
ちなみに目線は斜め45度、メーヤウの輝ける明日を見つめている、という設定です。 ここで会長の挨拶が入ります。 会長:我々「メーヤウ研究会」は! メーヤウのさらなる発展のために日々研鑚し! 鋭意精進してまいります! N:はい、いいですねー。じゃ、本番いきますねー。 さすがテレビ局、サクサク進行します。おかげで緊張するヒマなし。 本番。 会長:我々「メーヤウ研究会」は! メーヤウのさ、さ、さらなっ、るぅっ。 カミました。 N:あっ、ちょっと緊張してますかねー? 大丈夫ですかー? もう一回いきますよー。 こ、こここ、この会長がっ、よもや緊張なぞっ(してる)。 TAKE2。 会長:我々「メーヤウ研究会」は! メーヤウのさらなる発展のために日々研鑚し!! 鋭意精進してまいります!!!(リキみ過ぎました) N:はーいオッケーでーす、ありがとうございましたー。 え。もう終わりですか?(不完全燃焼) N:放映予定は4月5日ですんで。お楽しみにー(そそくさ)。 残された「メーヤウ愛好会」。 どうにも「動かされてしまった感」があったので、やや消化不良です。ですがやるべきことはやりました。ともあれ今日はメーヤウに行ってから解散し、後日の放映を待つこととしましょう。 |
1999年4月5日 寝過ごして、放映を見逃しました。 Tururururururu... 放映が今日だということを忘れて昏々と眠りこけていた僕の安眠は、電話のベルによって妨げられました。普段なら無視して寝続けていたところですが、何がしかの予感でもあったのでしょうか、モソモソと置き出して受話器を取ります。 R:もしもし。 ?:もしもーし、テレビ見たよ。アンタ、何やってんのー。 ……母っ(日記初登場)。 ……目が一瞬で覚め、今日が放映日だったことを思い出しました。さりとて放映をそれほど心待ちにしていたわけではなかったので、見逃してしまった事実はすんなりと受容できました。しかし問題は! 母ちゃん、何を見てるんだ。 R:見たの? M:見た。 R:なんでっ。 M:なんでってったって、見たのは見たンだから。こっちだってアンタが突然出てきたんだから、びっくりしたわよー。 R:や、母さん、いつも『おはようナイスデイ』派じゃないのさ。なんで『ルックルックこんにちは』見てんのさ。 M:アンタの学校の周りのお店の特集やってたからねー、見てたわけよ。 R:あう(明快至極)。 M:あ、ちょっと待って。電話代わるわ。 R:え? S:兄ちゃん、なんしよんならー(訳:何してんのさ)。 R:……お前も見たのか。 S:見たよ。でえれえわろたがな(すごく笑ったよ)。 R:学校は! S:今、春休みやがな。 R:あう(納得至極)。 S:兄ちゃん、東京行ってなんしよん? R:(痛っ)……いや、こういうことだ。 S:ぎゃははははー。 R:(涙を浮かべつつ、そっと受話器を置く) ……うーむ、なんだこのレスポンスの速さは。 こうなると、いかに放映自体には興味がなかったと嘯(うそぶ)いていても、実際どのようなものだったのかが気になるところです。迂闊にも僕はビデオのセットすらも失念していたのですが、誰かが記録していなかったものか。 もろやんが、録画していました(すばらしい)。 鑑賞会です(@もろやん邸)。 見ました。 ……。 短っ(出演10秒足らず)。 そして。
会長:「研究会」、か……。 もろやん;やはりこうしてテロップになってしまうと、なあ。 会長/もろやん:…………。 会長:臥薪嘗胆だな。 もろやん:うむ、薪(たきぎ)の上に寝るのだ。 会長:胆(きも)を嘗(な)めなければ。 もろやん:苦いのはイヤだ。 会長:じゃあ、カリーを嘗めよう。 もろやん:それならよし。 会長:それでこそ愛好会。会長は「チキン」で。 もろやん:おれは「ポーク」。 会長:うむ。いつの日か、「メーヤウ愛好会」の名を、天下に知らしめねばな。 もろやん:か、会長……。 会長/もろやん:(がっしりと握手<ウソ) かくして「メーヤウ愛好会」の全国進出は、今一度仕切り直しということになりました。いつの日か訪れるであろうその機まで、「日々研鑚」「鋭意精進」を重ねていかなければなりません。手はじめに明日の夜はメーヤウへ。今週の週替わりメニューはタイ風パンプキンカリーです。 |
2003 :
01-03
04-06
07-09
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