■ 2005年1月,2月,3月

   050317 カーペットを買った。

 引っ越しと同時に、カーペットを買った。

 配送日を指定し、1万といくらかのお金を支払いながら、思った。

 「これって、 『大人な行為』 だよなあ」 と。

 「大人な行為」 とはどういうことか。逆から言えば、 「子供はしない行為」 ということになる。子供は、カーペットを買わない。4畳半のカーペットを柱や壁の凹凸に合わせてカットしてもらったりはしないし、素材や色を選択したりも、防音とか防ダニとか抗菌とかいったオプション機能を検討したりもしない。

 「大人になったなあ」 という感慨は、誰しもが、ふとしたときに得るものだと思う。それは出張帰りの新幹線でビールを飲みながら 『文藝春秋』 を読んでいるときかもしれないし、牛乳パックをリサイクル用にハサミで切っているときかもしれない。あるいは直接的に、子供との対比においてみずからの大人としての立場を否応なしに実感させられる場面は多い。

 そのラインが人によって異なるのも、 「大人な行為」 の一面だろう。たとえば僕は、ひとりで電車に乗った中学2年生のときに 「大人に近づいた感」 を得たけれど、これに対して 「そんなことで?」 という感想を抱く人もきっといる。また僕は、浪人生のときに友人とマクドナルドに入ったときに 「大人になったなあ」 と思ったけれど、これを鼻で笑う人は少なくないだろう。マクドナルドが身近にある環境じゃなかったんだもん仕方ないじゃないか。

 「大人な行為」 を積み重ねて、 「大人に近づいた感」 をいくつも経由して、 「大人になったなあ」 と何度もため息ついて、やがてまがう方なき大人になる。大人になった自分を意識しなくなり、 「大人な行為」 にいちいち感慨なんて抱かなくなる。

 今回、カーペットを買うという行為により、久しぶりにその感慨を得た。一連の引っ越しの手続きそれぞれも、そこはかとなく大人な香りがした。僕はカーペットを買うことができた。1万といくらかのお金を払って。

   050122 たぶん、タブー。

 たとえば、年賀状。

 「あけましておめでとう」 とか 「謹賀新年」 とか 「A Happy New Year!」 とかいう言葉を使わないでレイアウトを構成しようと思うと、けっこう難儀する。ストレートにめでたさを表す言葉を避けつつ、それでもやっぱり年賀状には、祝賀ムードとか前向きな思いとか感謝の気持とかいったものを盛り込みたい。だけど 「おめでとう」 とは言えない。もどかしい。そんなマゾヒスティックな愉しみに浸りながら、ここ数年の僕は年賀状を作成している。

 この日記でも、あるいは仕事のうえでの原稿でも、長いことやってると自然 「使いたくない言葉」 が出てくる。その理由が明確に説明できるものだったり、単に感覚的に嫌いなだけだったり、種類はさまざまだ。常套句や慣用句もまた、できることなら使いたくないものが多い。使っちゃうのはくやしい。

 こうした言葉を禁句、すなわちタブーとしてみると、タブーが増えていくことは、文章を書くにあたっての縛りがどんどんキツくなっていくことを意味する。 「あ、この言葉はヤダ」 「しまった、この言い回しは使えない」 といった感じで書いては消し、書いては消し。原稿はなかなか上がらない。日記はなかなか更新できない。

 タブーは単語や言い回しのみならず、構成にも及ぶ。一度用いたパターンではまとめたくないし、同系統のオチは回避したい。過去にうまいこと書けた原稿の手法をなぞっても新味がないので、違う手法を探す。禁句というよりは禁忌になってくる。

 んなことつべこべ言ってないでとにかく原稿上げやがれ、という状況に置かれることも少なからずあるので、やむなくタブーを犯すこともある。タブーを書き連ねて行数を稼いで空白を埋める。そんなときには書き上げた爽快感は微塵もなくて、まず敗北感があり、誰に対してだかわかんないけど申しわけなさでいっぱいになる。

 タブーをたくさん抱えることには苦しさもともなうけれども、といって逃れることはできない。真っ先に思い浮かぶ単語、言い回し、構成に即座に飛びついていたら、表現の幅は広がらないし語彙は増えない。

 タブーについて考えることは言葉について考えることだし、その言葉を投げかける対象を思うことに通じる。たとえば 「がんばれ」 という言葉以外で相手を励ますのにふさわしい言葉はなんだろう? と考えるとき、何倍もの時間を費やして相手のことを思っているだろう。タブーを抱えるのも悪くない。

   050115 お気づきかと思いますが集計大好き。

 この5年間で、僕は大学を卒業して大学院に進学してあっというまにやめて就職浪人してる間は郵便局の深夜アルバイトで糊口をしのぎながらDTPスクールでMacに触れつつ連戦連敗の就職活動のすえにやっとこさ拾われた出版社での仕事ももうすぐ丸3年となるところでぼちぼち転職も考え始めようかというところまでやってきた。

 僕はサイトを350回更新し、そのうち日記の更新は311回で、トップページの更新は51回にのぼる。2回のBBS移転を経験しつつもサイト自体の移転はなく、閉鎖期間とか休止期間とかいったものもない。いってみればいつでも休止期間だ。

 BBSの延べ書き込み件数は2200件を超え、僕は1500件近いレスを返し、書き込み者数は70名を超えている。トップページのカウンタの値は2005年1月15日11:15現在48368。

 「みんなやってるから、じゃ、おれも」 という軽い気持で始めたサイトも、存外長く続いた。世はブログ隆盛だけれども、僕はブログの、すごく機能的で健康的で陽性な側面に馴染まないので、当面いまのスタイルを続けていくんだろうと思う。

 開設当初、2週間だけ公開していたトップページを復刻してみたけど、ここに挙がっているいまは影も形もないコンテンツの数々からは、当時の自分がいかに気負っていたかがうかがえる。この、なんでもつめ込んじゃえ感。乱立していたコンテンツは結局立ち行かなくなり、日記に収斂されることとなる。このトップページを見た人、かつおぼえてる人、少ないだろうなあ。

 そうして僕は、351回目のサイト更新をし、312回目の日記更新をし、52回目のトップページ更新をする。この5年、いろいろなことがあった。次の5年も、いろいろなことがあればいい。僕の 「10年」 も、折り返し地点だ。



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